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コラム4.障害者総合支援法

みなさま、こんにちは!就労継続支援B型事業所MOARU六条大溝です!
前回のコラムはこちらです!

今日のコラムは障害者総合支援法についてです。
障害者総合支援法は現在の日本の障がい福祉を支えている法律です。
制定に至るまでの日本の障がい福祉施策の変遷と共に紹介いたします。

障がい福祉施策のはじまり

 日本の本格的な障がい者施策は戦後から始まりました。日本国憲法が制定され、GHQの指示のもと社会福祉に対する施策が打ち出された結果
・「生活保護法(1946年)」
・「児童福祉法(1947年)」
・「身体障害者福祉法(1949年)」
の福祉三法が制定されました。また「社会福祉事業法(1951年)」や、障がい児に対しては「学校教育法(1947年)」が制定されるなど、日本国憲法を契機として現在の障がい福祉、社会福祉の基礎が作られました。

ノーマライゼーションの広がり

 1950年代になると、ノーマライゼーションという考え方が世界中に広く浸透しはじめました。
 ノーマライゼーションとは、高齢者や障がい者などの社会的弱者を排除せず、誰もが同等に生活ができる社会を目指す考え方です。北欧デンマークで発祥した概念で、戦後70年以上、社会福祉のキーワードとして使われています。
 この考え方は1970年代になると、世界中でより一層の広がりを見せ、国連総会で「障害者の権利に関する宣言」(1975年)」が採択されました。これにより障がい者の社会参画への流れが加速していきます。
 1981年が「国際障害者年」に制定され、翌年には障がい者の社会生活と社会の発展への完全参加と平等という目標実現とした「障害者に関する世界行動計画」が示され、その達成を図るための国際協力が求められました。また、国連は目標実現のための期間として、1983年から1992年までの10年間を「国連障害者の10年」と定めました。
 日本でもこれらを受けて、障がい福祉拡充のための様々な取り組みや法改正を行い、
ノーマライゼーションの理念が浸透するようになりました。

日本における障がい福祉の発展

 ノーマライゼーション理念に基づいた改革が進められていた中、1990年代のバブル経済崩壊によって国の財政問題が深刻になったことを背景に、財政面からも社会福祉の構造が改革されていきます。
 従来は障がい福祉サービスを利用する際、あらかじめ行政によって決められた障がい福祉サービスや利用先を選択する「措置制度」が取られていましたが、利用者自身が個々の必要な福祉サービスを選択できる契約制度への転換を目的に、「支援費制度」が2003年に施行され利用者本位のサービスを図ることが可能となりました。
 しかし、サービスの提供の仕方が障がい種別(身体、知的、精神)ごとに分かれていたためわかりにくく使いづらいことや、精神障がい者は対象外とされていたこと、地域間でのサービス格差の未解消など多くの課題が残されていました。
 
 これらの問題を解決し、ノーマライゼーション社会を実現するため、2005年に「障害者自立支援法」が制定、翌年に施行されました。障害者自立支援法により障がい種別に関わらず、障がいのある方たちが必要とするサービスを利用できるよう、仕組みが一元化されました。
 それだけでなく支給決定の手続きの明確化、就労支援の強化など、問題とされた多くの部分も改正されました。
 そして2013年、障がい福祉の更なる拡充を図るため障害者自立支援法が法改正され、「障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」が施行されました。

障害者総合支援法

基本理念

 法改正により新たに基本理念(第1条の2)が制定されました。基本理念には、次の6つが掲げられています。

①全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること
②全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すること
③可能な限りその身近な場所において必要な支援を受けられること
④社会参加の機会が確保されること
⑤どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
⑥日常生活又は社会生活を営む上での社会的障壁の除去といった重要な考え方を新法の理念としても規定することとしたもの

 障害者総合支援法はこの理念に基づき、ノーマライゼーション社会の更なる実現を目指しています。また3年ごとに福祉サービスについて見直しや改正をすると定められているので、これからも障がい福祉サービスの拡充がなされていくでしょう。

主な改正点

 基本理念が制定されただけでなくいくつか大きな改正点がありました。主要な改正点を紹介します。

 これまで法が対象とする障がい者の範囲は、「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者(発達障害を含む)」であり、難病患者は含まれていませんでしたが障がい者の定義に「難病等」が追加されたことで、難病のある方も障がい福祉サービスの受給対象になりました。対象疾病は2021年からは366疾病までに拡大されています。
 また重度訪問介護の対象者拡大も行われました。今まで重度訪問介護の対象者は「重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるもの」と定められていましたが、「重度の知的障害者・精神障害者」に対象が拡大されるようになりました。常に介護を必要とする知的障がい・精神障がいのある方が、在宅生活を継続しつつ日常的な支援を受けられるようになりました。

 従来の「障害者自立支援法」までは、受給手続きの際には「障害程度区分」が採用されていましたが、個々の障がい特性が反映されにくい面があったため、障害者総合支援法では障害程度区分を廃止し、新たに障害支援区分が制定されるようになりました。また、区分判定の際には個々の障がい特性に応じた認定がなされるよう、適切な配慮や措置を講じることが定められています。

まとめ

障害者総合支援法は現在の障がい福祉を支えている法律です。
障がい福祉サービスには今日でも多くの課題が残されていますが、
法律が制定されるまでの歴史や、障がい福祉の理念を理解することが
ノーマライゼーション社会を実現させるためことに繋がります。

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